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科学(技術)者は悪なのか?

さっき、知り合いがリツイートしていた次のようなツイートを見たら
kaz_shiraishi (白石一文)
しかし、放射能の危険性がはるか昔から認識されながら、どんな高線量でも二、三時間は完全に防げる防護服ひとつ作れずにいまに至った、原子力科学者たちって、無責任で無能としか言いようがなくないか? via web
2012.03.28 13:06


なんか、こう、ものすごく嫌な気分になった。
「僕らは被害者。
悪いのは、政府と科学(技術)者。」

と決めつけられてる気がしてさ。

しかし、こいつに反論しようにも、
ツイッターでは、私のような市井のおばちゃんの発言よりも
世間的にあるていど知られている(=影響力のある)人の発言のほうが
その人に
論争のタネになっている物事についての見識が
ほとんどなくても重視される傾向があるから
まず、勝ち目はなかろう。
(奴のほうがフォロワーとか多いし、
私には論争に付き合ってる時間もないからさ)
卑怯者だといわれるだろうが、
ツイッターを電車の中に例えた人によると
自分の庭であるブログでぶつくさボヤクことにする。

まずイラッときたのが、
原子力科学者(私はこの系統の研究室に学部の4年の時だけ所属していたのである)
に対する冷たい目線だ。
「無責任で無能」ですか、はいはい。
知ってたら何でもやらなきゃいかんのですか、原子力科学者は。
そして、あいまいな物言いにもイラッときた
はるか昔」っていつだよ。
江戸時代にすでに放射能の危険性は認識されてたわけか?!
どんな高線量でも」って、何㏜/hくらいの環境を言うのさ。
完全に防げる防護服」って、完全ってのはどんな状況のこと?
外界の放射線量がこれくらいの時に、着用していると放射線量がこの程度抑えられます
って必要とするところを示してもらわないと、
原子力科学者じゃなく、放射線防護服を作る技術者(実はここ重要な)は
いったいどんな素材を作ってどう作ったらいいのかの手がかりすらもないじゃん。

放射線の危険性が認識されたのは、
放射能物質を用いて放射線の研究にいそしんだ
初期の原子力科学者(キュリー一家の死因を確認していただきたい)が
当時はまだ因果関係がわかっていなかっただろうが、
健康を害したことも手掛かりであったろう。
広島・長崎の原子爆弾は、短い期間、高線量の状態を作るタイプだが
そのあとは急速に放射線量は低くなる。
原子爆弾の被害者の存在は
放射能の人体に及ぼす危険性の貴重なデータになっていたのである。
軍事兵器として、核爆弾が考えられた時、
高線量の状態がなるべく短いものがよい、とされたのは
防護服を着ての軍事行動は現実的ではないことがわかっていたから。

私が下っ端も下っ端の原子力科学者の徒弟であった
20年余り昔の記憶を引っ張り出してみると、
研究室の片隅には低レベルの放射線源が転がっていた。
ええっと、鉛の缶の中に密閉線源が入っていたのでありますわ。
放射線の作用を計測器で測定するんで、そのテスト線源ね。
放射線の作用を受けやすいんは、
水晶体(これは、主には電磁波であるガンマ線による障害でしょうな。
紫外線が白内障そのほか、目の状態を悪くするのと同じ理由)
あと、気ぃ付けるべきは生殖器とも。
(これは、DNAコピーにエラーが生じても、体細胞であればその影響は個体にとどまる。
しかし、生殖細胞であれば、それ以降の世代に悪いことが起こるリスクがある)

たかがあんな低レベル放射線源でも鉛の缶っす。
アルファ線を遮るには密度の高いもんじゃないと効果が低いからなあ。
ベータ線、ガンマ線を遮るには、またそれに適した素材が必要。
そんなん組み合わせて作る防護服っすよ。
高線量領域用だったら、新素材でもない限り
重たくって着てられやしない気がするんですけどねえ。

そういえば、容器の缶ですが、
「中性子やらなんやらが当たりまくるので、
 これ自体が放射性核種に変わってるかもしれんなあww」
と冗談めかして先輩が言ってました。
ん?ということは高線量区域に入った後の防護服って
表面に放射性の埃とかついてるでしょうし、
かなり性質の悪い放射性廃棄物になってるんじゃないっすか?

高放射線領域に長く入れるような防護服があったら、
安易に作業員を無茶使いするのが
今のえらいさん方だという視点も欠落してることにもイラッとしますよ。
ちょっと学生の研究目的で携わっても
取扱い従事者講習にでるわけなんですが
原子核物理学の初歩の知識が皆無な人があの説明聞いても
ピンと来ないかもしれないような代物だったし
ひょっとしたら(しなくても、かも)
原発の作業員さんたち、講習受けてないんじゃなかろうかいなあ。

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by gabefunyaa | 2012-03-28 15:38 | テーマトーク | Trackback | Comments(0)

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